正法を体に得る

2011-07-09

「正法(みのり)を体(み)に得ようとする人は男でも女でも、

  • 第一(はじめ)に施しによります。即ちその肉体(からだ)を切り刻んでまでも、その意(こころ)を護って施しを果たし遂げようといたします。是等の人人は、正法をその身に打ち建てます。これを『施しによって証(さとり)に至る』と申します。
  • 第二(ふたつめ)に、戒めによって、五官(こころ)を護り身(からだ)と口と意(こころ)とを浄(きよ)め、
  • 第三(みつめ)に、忍ぶことによっていかに罵られ辱められても、恐れず瞋(いか)らず益(ますます)忍ぶ力を強め饒(めぐ)む心を増し、顔色さえも変えることがありません。
  • 第四(よつめ)に勤めはげんで懈(おこた)る心を除き、飽くまでも威儀(みずまい)を厳(おごそ)かにして進み、
  • 第五(いつつめ)に禅定(こころしずめ)によって乱れる心、外に向こう心を摂(おさ)めて正しい念(おもい)に住み、
  • 第六(むつめ)に智慧をみがきあらゆる義理(ことわり)やあらゆる学事(まなびごと)、又はあらゆる技芸(てわざ)を究めます。


かようにして各(おのおの)の行(つとめ)によって正法(みのり)を身に打ち建て、それによって証(さとり)の岸に至るのであります。[中略]正法を体に得た人は、そのために三つのものを捨てるからであります。それは身(からだ)と命と財(たから)とであります。

  • 第一(はじめに)身を捨てれば、この世と後の世に亙(わた)って、老(おい)と病と死を離れて、壊れることのない法(のり)の身を得、
  • 第二(ふたつめ)に命を捨てれば、辺(ほと)りない永(とこし)えの功徳(いさお)を得てあらゆる奥深い仏の法(のり)に達(いた)ることができ、
  • 第三(みつめ)に財(たから)を捨てれば、普通(なみなみ)の人のもたない、滅びず尽きぬ功徳(いさお)を得、すべての人人の敬いを受けるのであります。


世尊、このように三つのものを捨てる人は、正法(みのり)を体(み)に得て仏の証明(みあかし)をうけ、あらゆる人人から尊ばれます。」(大法輪閣版、『新訳仏教聖典』p447)