芸術とは何だったのか

2012-03-27

「精神的向上心のない奴は馬鹿だ」というのは、夏目漱石の『こころ』の中で二度出て来る。『こころ』は新聞の連載小説だった。前半部分で終わっているはずだった。しかし次の連載者が見つからなかった。それで「Kからの手紙」が続編となった。さて、人間は人間として生れて限りなく精神的向上心がある。社会の中で自己実現して幸せになろうとしている。それは生まれながらの自然性を陶冶して、人格及び品性を獲得することだった。生まれながらの自分を磨くのである。これが人格的価値だった。この傾向において文化活動がある。芸術は人間の可能性を価値的に追求するものである。どこまでも人格的価値に規定されている。それが名誉だった。それに対して面白ければ善いとか馬鹿になることが幸せであるとするのは、人間として希求していた価値に逆行している。動物性が人間性であるかのように彼らは吹聴増殖した。そして社会はどうなったのか。クレームが正当な権利だと勘違いしている消費者が多い。クレーム処理が利益となるビジネスモデルともなった。それで善いのかどうか。「お客様は神様である」と言われてからの事だった。お客様の中に神様がいるかもしれないというのが真実であろう。ほかの人ができないことをすれば何でも芸術であると言えるのではない。その意味でタケシの映画及びアートが芸術と言えるだろうか。不快感を覚えるのは私一人だろうか。むしろ日本人の恥と言って善いだろう。芸術とは何だったのか、もう一度見つめなおす必要がある。